私は、存在しない機能を前提にした決まりを消そうとしていました。
使っているWordPressのテーマに、広告のコードを登録して記事から呼び出す機能がある。そう聞いて指示を出したところ、AIから「その機能は存在しません」と報告されたためです。存在しないものを前提にした決まりが残っていると、次に同じ作業をする人が困ります。
書類を直す手続きに入ったところで、別の人から指摘を受けました。その機能なら、他の場所で現に使っている、と。
報告には根拠が添えられていた
信じた理由は、報告に根拠が書かれていたからです。
管理画面の項目を一覧したが該当が無い。内部のファイルを検索しても見つからない。記事や固定ページの一覧にも無い。この3つが挙げられていました。
もっともらしく読めます。説明が雑なら疑いますが、丁寧だと通してしまいます。
代わりの仕組みは作られていた
このときのAIの対応は、悪いものではありませんでした。
存在しないと結論した後、作業を止めずに、同じ目的を果たす仕組みを自分で作っています。本文に直接書き込まない形で、名前を付けて登録し、記事から呼び出せるようにしました。決まりが何を実現しようとしているかを読み取って、それを満たす形にしたわけです。
動いてはいました。ただ、既にあるものを使わずに、同じものを作り直したことになります。
呼び名が違っていた
指摘を受けて、調べ直させました。管理画面の項目を上から順にすべて一覧し、内部のファイルを複数の言葉で検索し、検索の命令が正しく動くことを先に確かめる、という手順です。
見つかりました。管理画面の設定の中に、専用の項目としてありました。専用の保存場所を持ち、記事からは短い記述で呼び出せる形です。
見つからなかった理由は3つありました。
- 提供元が、その機能を別の名前で呼んでいた。私が指示に書いた名前とは違う
- 内部のファイルの一部の階層だけを見て、その下を見ていなかった
- 記事や固定ページの一覧に無いことだけで結論した。実際は専用の保存場所を使っていた
いちばん大きいのは1つ目です。呼び名が違えば、正しい語で探しても届きません。私は自分の知っている呼び名で指示を書き、AIはその語で探しました。どちらも誤ったことはしていません。ただ、提供元は別の言い方をしていたのです。
決めていた手順を、この作業では踏んでいなかった
困ったのは、この時点で対策がすでに決まっていたことです。
書類の点検では、0件という結果を疑うための手順を毎回踏んでいました。同じ範囲で必ず見つかる文字を探して、件数が出ることを示す。探せていたことの裏づけです。
ところが、機能を探す作業では踏んでいませんでした。
点検の作業と、調査の作業を、無意識に別のものとして扱っていたわけです。決めたばかりの手順を、少し形が違う場面では使わない。これは意識では防げないと考えて、書類のほうを直しました。
0件という結果を疑う手順そのものについては、AIに点検させたら異常なしと出た 点検自体が動いていなかった話 に書いています。
「ない」と言うには何が要るか
この件を通して、次のことを考えるようになりました。
「ある」と言うには1つ見つければ足ります。「ない」と言うには、探し方が全部届いていることを示さなければなりません。
存在しないという結論のほうが、はるかに強い主張です。それなのに、私もAIも、同じ重さで扱っていました。見つからなかった、だから無い。この飛躍に気づきませんでした。
いま踏ませている4つ
存在しないという結論を出す前に、次を踏ませるようにしています。
- 別の呼び名を3つ以上考えて探す
- 管理画面や設定の画面を、上から順に目で見る
- 保存先が想定と違う場所にある可能性を疑う
- 他の場所で現に動いていないかを確かめる
4つ目が効きます。現に動いているものを存在しないと言うことはできません。探し方の問題だと、すぐ分かります。
止まったのは自分の中ではなかった
最後に書いておきたいことがあります。
この件で私が止まったのは、別の人が「他で動いている」と指摘したからです。自分の中では止まりませんでした。
根拠が添えられていたので、疑う理由が見つからなかった。誤った結論が、そのまま決まりになる寸前でした。
AIに任せるときに怖いのは、間違った答えが返ってくることよりも、間違った答えに丁寧な説明が付いてくることかもしれません。

