任せない作業を、最初から決めていたわけではありません。
任せてみて、うまくいかなかったものが残った。それだけです。いま手元に残っているのは4つで、どれも共通点があります。
1 その会社にしか言えないこと
会社のホームページを3社ぶん作り直したとき、文章もAIに書かせました。
出てきた文章は、日本語として問題ありません。一見そのまま使えそうにも見えます。ただ読み返すと、どこの会社にも当てはまってしまうのです。
お客様に寄り添う。確かな技術力。地域に根ざした。この手の言葉が並びます。間違ってはいないのですが、その会社である必要がありません。
とくに企業理念は、私が自分で書きました。理念はその会社が何を大事にしているかという話なので、他社と同じ言葉になった時点で意味がなくなります。
3社の記録は AIホームページ作成の実例 HTMLを書けない私が企業3社を制作 に書いています。
2 良いか悪いかの判断
見た目を作らせたとき、私は「もっとかっこよくしてほしい」と伝えました。
出てきたのは、角の丸い枠が影付きの枠に変わり、色が変わったものでした。並び方も画面の組み立ても、ほとんど動いていません。
「かっこいい」が何を指すかを、私が決めていなかったのです。
やり方を変えて、使ってほしくないものを先に具体的に渡す形にしました。これで往復は減りました。ただ、条件をすべて守っているのに、特徴のない画面が出てくるという状態になります。
避けたいものを外しただけでは、何かになるわけではありません。どういう見え方にしたいかは、こちらが持っている必要がありました。
3 確かめ方そのものの設計
これがいちばん高くつきました。
作業を任せて、報告を信じて、後から間違いだと分かったことが8回あります。8回とも、間違っていたのはAIではなく、確かめ方のほうでした。
点検の命令が動いていない。測る範囲が狭い。探す言葉が違う。どれも、確かめ方を設計した側の落ちです。
そのたびに対策を作りましたが、次は別の形で起きました。対策を4つ持っている今でも、まだ足りていないと思っています。
詳しくは AIの報告を8回信じて8回とも間違っていた 確かめ方の話 に書きました。
確かめ方を任せられない理由
確かめる作業そのものは、任せられます。実際に任せています。
任せられないのは、何をもって確かめたことにするかの部分です。0件という報告をどう扱うか、どの範囲を見れば十分か、何を測れば分かったことになるか。ここを決めるのは、こちらの仕事として残りました。
4 出典の無い数字
記事を約400本書き直させているときに決めたことです。
古い記事には、当時の価格や件数が書かれています。これをそのまま書き直させると、もっともらしい新しい数字が入ることがあります。
確かめずに入った数字は、元の古い数字より危険です。
古いことが分かっている数字は、まだ扱えます。読んだ人が「いつの話か」と確かめる余地があるからです。新しそうに見える誤った数字は、誰も疑いません。
そのため、数字は書き直させず、私が確認したものだけを入れる形にしています。
400本の記録は AIで記事を400本書き直した 品質を保つためにやっていること にあります。
4つの共通点
並べてみると、共通しているものがあります。
- その会社にしか言えないこと
- 良いか悪いかの判断
- 確かめ方そのものの設計
- 出典の無い数字
どれも、正解が外にないものです。
調べれば分かることは、任せられました。手順が決まっていることも、任せられました。任せられなかったのは、何が正しいかをこちらが決めなければならないものです。
逆に、任せて良かったもの
任せない話ばかり書きましたが、任せたほうが良かったものも書いておきます。
- 数を数えること。記事や画像が何件あるかを1つずつ突き合わせる作業
- 同じ形の作業を繰り返すこと。数百本の記事を同じ方針で直す作業
- 手順が決まっている作業。サーバーの設定、ファイルの移動
- 調べること。どこに何があるか、どう設定するか
私はシステム開発の技術者ではありません。これらを自分でやろうとすると、調べるところから始まります。任せられるようになって、いちばん変わったのはここでした。
任せる範囲は、失敗するたびに変わる
最後に書いておきたいことがあります。
この4つは、いまの時点のものです。
3年前なら、もっと多くを自分でやっていました。半年前は、確かめ方の設計を意識していませんでした。任せて失敗するたびに、線が引き直されています。
これから任せる範囲は、たぶんまた変わります。いま任せていないものを任せるようになるかもしれませんし、逆に任せていたものを引き取ることになるかもしれません。
最初に線を引いてから始める必要はないと思います。任せてみて、うまくいかなかったものが線になります。私の場合、そうやって4つが残りました。

